仮想通貨は2017年に価格が大きく高騰したことで世間の注目を集め、現在まで盛んに取引が行われています。
ビットコインで言えば、2017年初頭では1BTC当たり8万円台が相場でしたが、同年12月には1BTC当たり220万円代まで上昇しました。実に25倍近い値上がりです。
今では2017年ほどの値動きはありませんが、2018年6月29日に1BTC当たり660,926円がその1月後の7月29日には907,590と14万円前後の値動きがあります。10BTCを所有していたら約140万円の利益です。
この値上がりによって得た利益は確定申告をする必要があります。
ただし、仮想通貨によって利益を得た人みんなが確定申告をしなくてはいけないわけではありません。
まずは、ご自身が次の要件に該当するかご確認ください。
確定申告をしなくてもいい場合
2018年中に買った(以前から保有していた)仮想通貨を2018年中に商品の購入に使用したり、利益確定をしなかった方
仮想通貨を持っているだけでは確定申告の必要はありません。
給与所得者(サラリーマンなど)については、2018年中に給与以外の所得が20万円以内の場合の方
給与所得者には一定の特例により、給与以外の所得が20万円以内であれば確定申告をする必要がありません。ただし、事業を行っている個人事業主やその他の理由により確定申告が必要な方は、20万円以内かどうかにかかわらず、仮想通貨で得た利益に対して確定申告をする必要があります。
仮想通貨にかかる所得の計算方法
仮想通貨を売却または使用することによって確定した利益は、原則として雑所得という所得区分に分類され、所得税の確定申告が必要な所得となります。
雑所得とは、給与所得や不動産所得などといった10種類の所得区分のうち、他の9種類の所得区分のいずれにも該当しないものを言います。雑所得の例では、年金や原稿料などが該当します。
この雑所得の所得金額の算出方法は、次の算式で計算します。
「収入金額ー必要経費=所得金額」
※ここでは公的年金等は考慮しません。
収入金額とは、仮想通貨を売却することによって得られた金額の合計で、手数料などが引かれる前の金額を言います。
必要経費とは、上記の収入を得るために支出した費用のことで、具体的には仮想通貨取引所の手数料や売却または使用した仮想通貨の取得価額(いわゆる元本です。)などを指します。
要するに、入ってきた金額から出て行った金額を差し引くことで所得金額が計算できます。
例)○収入金額100万円 ○取得価額20万円 ○手数料5万円
100万円ー20万円ー5万円=75万円
所得金額75万円>20万円 ∴確定申告が必要
雑所得に区分された仮想通貨は損益通算ができない
少しでも所得税や確定申告について知識がある方は、ある所得金額にマイナスが生じた場合は他の所得金額のプラスと相殺ができる損益通算をご存知かと思います。
実際、仮想通貨は値動きががあるため利益が出るときもあれば損することもあります。2018年は仮想通貨で赤字が出たから確定申告で他の所得と損益通算しようと思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、雑所得に区分された仮想通貨は損益通算ができません。
損益通算ができる所得は限られていて、「不動産所得」「事業所得」「山林所得」「譲渡所得」の4つの所得区分のみとなります。
仮想通貨での赤字は同じ所得区分の雑所得の中でのみ可能となり、雑所得の中でも差し引くことができなかった赤字の金額はその年に切り捨てられてしまい、翌年には繰り越せません。
事業として仮想通貨の取引を行い生計を立てられている方は上記4つの所得区分のうち、「事業所得」としての申告の可能性もありえますが、税務調査の際、事業として行っている証拠書類等を提示する必要があるため、一度税理士など専門家に相談することをお勧めします。
仮想通貨を複数回購入している場合の取得価額の計算方法
何度か仮想通貨を購入していると1回目に購入した時と2回目に購入した時の価額が違っていると思います。その後、仮想通貨を売却した時にどちらの取得価額を必要経費に入れるべきでしょうか。または、平均をとるべきでしょうか。
この複数回購入した時の取得価額の計算方法は移動平均法もしくは総平均法によることとされています。
前提として、「1回目に1BTCを10万円で購入し、2回目に1BTCを20万円で購入し、3回目に1BTCを30万円で購入した。」と仮定して移動平均法と総平均法を見ていきます。
移動平均法
移動平均法とは、仮想通貨を購入した都度、1単位あたりの取得価額を算出する方法をいいます。
前提条件で計算すると、次のようになります。
1回目購入時:10万円×1BTC=10万円/BTC
2回目購入時:(10万円+20万円)÷(1BTC+1BTC)=15万円/BTC
3回目購入時:(10万円+20万円+30万円)÷(1BTC+1BTC+1BTC)=20万円/BTC
2回目購入後に売却をすれば1BTCあたりの取得価額は15万円となり、3回目購入後に売却をすれば1BTCあたりの取得価額は15万円となります。
移動平均法のメリットは、購入の都度、取得価額が計算されるので、売却のタイミングや利益の計算がしやすく税金のめどが立てやすいことが挙げられます。反対に、多くの取引をされる方にとっては、その都度の計算が非常に手間となります。
総平均法
総平均法とは、購入の都度取得価額を計算していた移動平均法とは異なり、1年間で購入した合計で取得価額を計算します。
計算式はシンプルで、購入価額の合計を購入した仮想通貨の合計数で割ることで求められます。
先ほどの前提条件で計算すると、次のようになります。
(10万円+20万円+30万円)÷(1BTC+1BTC+1BTC)=20万円/BTC
移動平均法の3回目の購入時と同じ計算式ですが、2回目購入後に売却しても、3かい目購入後に売却しても1単位あたりの取得価額は20万円となります。
総平均法のメリットは、年に一度だけ計算するだけなので移動平均法と比べると手間は大幅に削減されます。しかし、年末にならないと取得価額が計算されないため、売却時に利益が出ているのか、税金がどのくらい発生しそうなのかといったことがわかりづらいことがデメリットとなります。
最後に
仮想通貨はまだ制度が確立して日が浅いもので、様々な情報が行き交っています。その中で、ご自身の判断と責任によって税金を計算して確定申告を行わなければなりません。ご自身での計算に不安がある方や税務調査への対策を準備されたい方は税金の専門家である税理士に相談すると心強いです。